【保護者・指導者必見】部活動での熱中症予防と対応 — トレーナーが教える実践ガイド
- cashregisterpluson
- 5月3日
- 読了時間: 10分
お世話になっております。院長の佐野です。
高校野球も春季大会を迎え盛り上がっていますね。
最近は暑くなる日も増えてきましたね。
私は毎週、健保グラウンドでアメリカンフットボールのトレーナーをしています。
そして毎年起こりえるのが”熱中症”です。
学生の方々も耳にしたことがある”熱中症”
果たしてどんな症状で、ならない為にどんな対策をしていけば良いか
トレーナーの目線でお話させていただきます。
はじめに:熱中症はコントロール可能なリスクです
「大丈夫、まだいける」——
部活動の現場でよく耳にするこの言葉が、
時に取り返しのつかない事態を招くことがあります。
毎年、深刻な暑さが続き夏季の部活動や体育の授業で
熱中症による救急搬送が相次ぎ、最悪の場合は命に関わる事態となることもあります。
しかし、熱中症は正しい知識と対策で予防ができると言われています。
本記事では、Plus ONE 鍼灸接骨院のトレーナーとして数多くのスポーツ現場に携わってきた経験から、
特に部活動を指導する先生方と保護者の皆様に向けて、
実践的な熱中症対策をお伝えします。
熱中症の基礎知識:症状の進行と重症度
熱中症とは、
高温多湿な環境下で体内の水分や塩分のバランスが崩れ、
体温調節機能が正常に働かなくなることで起こる障害の総称です。
軽度から重度まで段階的に症状が進行するため、早期発見と適切な対応が重要です。
熱中症の分類
Ⅰ度(軽症):熱失神、熱けいれん
主な症状: めまい、立ちくらみ、筋肉の痛み・硬直(特に脚や腹部)、大量の発汗
意識: 清明
体温: 正常〜やや高め(37℃台)
判断の目安: 水分補給と涼しい環境への移動で回復する
足が何回もつる。身体全身がつる。などは救急搬送が必要なこともあります。
Ⅱ度(中等症):熱疲労
主な症状: 頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感(グッタリ)集中力低下
意識: やや混濁(質問への返答が遅れる、反応が鈍いなど)
体温: 高め(38℃〜39℃台)
判断の目安: 水分補給だけでは回復が難しく、医療機関の受診が必要
Ⅲ度(重症):熱射病
主な症状: 意識障害、けいれん、肝機能障害、腎機能障害、血液凝固異常
意識: 混濁または喪失
体温: 高熱(40℃以上)
判断の目安: 緊急事態。迅速な救急搬送が必要。
肝臓、腎臓、肺、心臓などの多臓器障害を併発し死亡率が高くなります。
死の危険のある緊急事態であり、救命できるかどうかは、
いかに早く体温を下げられるかにかかっています。

熱中症のリスク要因とトレーナーが注目するポイント
熱中症の発生リスクは、環境要因と個人要因の組み合わせで大きく変動します。
トレーナーとして特に注目すべきポイントをご紹介します。
環境要因
WBGT値(暑さ指数):
気温だけでなく、湿度・輻射熱を加味した指標
活動場所の特性:
体育館(空気の滞留)、人工芝(照り返し)などは特にリスクが高い
急激な気温変化:
急に暑くなった日(体が暑さに慣れていない)
時間帯:
日が昇る14時前後が最もリスクが高い。夕方は湿度も上昇するため油断しない
競技柄:
防具をつけなければいけない(ヘルメット 防具 プロテクター)
個人要因
体調:
前日の睡眠不足、風邪気味、下痢など脱水を伴う消化器官の不調
基礎体力・暑熱順化:
運動習慣の有無、暑さへの慣れ
体格:
肥満傾向の選手(熱放散効率が低下)
既往歴:
過去の熱中症経験者(再発リスクが高い)
年齢:
中学生は特に注意が必要(体温調節機能が未発達)
熱中症警戒時期
いつから注意すべきか
熱中症対策は気温の高い夏だけの問題ではありません。
トレーナーとして特に注意喚起したいのは以下の時期です:
年間の熱中症リスク時期
5月下旬〜6月:
体が暑さに慣れていない時期(暑熱順化前)が最も危険
7月〜8月:
最も気温が高く、湿度も上昇する時期
9月上旬〜中旬:
夏の疲れが蓄積する時期
特に注意が必要な条件
梅雨明け直後(急激な気温上昇)
前日より5℃以上気温が上がった日
雨上がりの晴天日(湿度が非常に高い)
連休明けの活動初日(テスト明けなどリズムの乱れ)
トレーナー実践!熱中症を防ぐための7つの対策
1. 環境モニタリングの徹底
WBGT計を必ず活用(スマホアプリでも代用可)
WBGT値に応じた活動指針を守る
31℃以上:原則運動中止
28〜31℃:厳重警戒(激しい運動は中止)
25〜28℃:警戒(積極的に休憩)
21〜25℃:注意(定期的な水分補給)

2. 科学的な水分補給戦略
タイミング:
運動前: 練習開始30分前に250〜500ml
運動中: 15〜20分ごとに100〜200ml
運動後: 体重減少分を1.5倍量で補給
経口補水液、スポーツドリンク、塩分タブレットの使い分け:
経口補水液(OS-1、アクアソリタなど)
特徴: 塩分濃度が高く(Na 0.2~0.3%)、糖分が少ない(2~3%)
適した場面: 脱水症状がある時、熱中症Ⅱ度以上の回復期
注意点: 糖分が少ないため、長時間の運動エネルギー源としては不十分
日常的に飲むものではなく、緊急時に飲用する
スポーツドリンク(ポカリスエット、アクエリアス、ガトレードなど)
特徴: 適度な塩分(Na 0.1~0.2%)と糖分(5~8%)
適した場面: 運動中の水分・電解質・エネルギー補給
注意点: 市販品は糖分が多めのものもあるため、長時間飲む場合は水で1.5~2倍に薄めると良い
塩分タブレット(ソルトタブ、塩熱サプリなど)
特徴: 手軽に塩分補給ができる
適した場面: 水分を多く摂る必要がある時の電解質バランス調整
使用法: 水のみを摂取している時に摂取。
スポーツドリンクを飲んでいる時には必要ないと言われています。
注意点: 水なしで噛み砕くと胃腸への刺激が強くなる。過剰摂取は塩分過多になり健康被害にもつながります。

3. 効果的な休憩導入
30分活動ごとに5〜10分の休憩を設ける
「涼しい場所での休憩」を徹底
プールやアイスノンを使い身体を冷やす
テントやベンチなど暑さと疲れをとれるものの設営
4. 着衣の工夫
通気性・吸湿速乾性に優れた素材の使用
帽子の着用を義務化(特に屋外)
冷却ベストやアイスタオルの活用(特に屋内・屋外ともに)
5. 暑熱順化トレーニングの実施
暑い時期の初期(5月下旬〜6月)に段階的に暑さに慣らすプログラムを導入
最初の5〜7日間は運動強度を70%程度に抑え、徐々に増加
毎日30〜60分の暑熱環境下での運動を1〜2週間継続
6. コンディション管理の徹底
練習前の健康チェックシートの導入(睡眠時間、食事状況、体調など)
練習前後の体重測定で脱水状態を確認
尿の色でのセルフチェック指導(濃い黄色=要注意)

7. 保護者との連携
朝食の摂取状況の確認
前日の水分摂取と睡眠状況の共有
自宅での暑さ対策指導(就寝前の水分補給など)
熱中症発生時の対応:冷却の科学
熱中症が疑われる選手が出た場合、その場の適切な対応が予後を大きく左右します。
特に重要なのが
「冷却」
です。
体を冷やす部位の優先順位
頸部(両側頸動脈): 太い血管が通っており、効率的に冷却できる
腋窩(脇の下): 大血管に近く、皮膚が薄いため効果的
鼠径部(足の付け根): 大腿動脈が通っており、冷却効果が高い
額と後頭部: 脳に近いため、脳温の上昇抑制に効果的
※緊急時は服を着たまま、浴槽に水をため、そのまま入れたり
ホースの水を頭からかけ続けることもあります。
冷却方法
軽症〜中等症の場合:
涼しい場所(できれば空調のある室内)に移動
衣服を緩め、体を冷やす
上記の優先部位にアイスパックや冷却タオルを当てる
(直接皮膚につけるのは避け、タオルで包む)
扇風機やうちわで風を送る(気化熱を利用)
経口補水液や薄めたスポーツドリンクを少量ずつ飲ませる
重症の場合:
すぐに救急車を要請(119番)
全身の冷却を最優先(頸部・腋窩・鼠径部に氷嚢)
衣服を脱がせ、全身に水をかけながら扇風機で送風
体温が38.5℃以下になるまで積極的に冷却を続ける
水分は無理に飲ませない(誤嚥の危険)
「体温が下がればすぐに回復する」わけではなく、
体温が下がっても内臓障害のリスクがあるため、必ず医療機関での診察が必要。
もし、熱中症になった人がいた場合、焦らず行動できるように
熱中症対応マニュアルを作成することもおすすめします。

【特に注意】体育館など屋内での熱中症対策
屋外の暑さは認識しやすいですが、
実は体育館などの屋内環境も熱中症リスクが高い場所です。
特に以下のポイントに注意が必要です:
屋内環境特有の問題点
空気の滞留:
窓が少なく、自然換気が不十分な体育館では熱と湿気が蓄積
輻射熱:
屋根や壁からの輻射熱が体温上昇に寄与
トレーナー推奨!屋内活動での具体的対策
戦略的な換気
対角線上の窓・扉を開放(クロスベンチレーション)
活動前から換気を始め、暖まった空気を事前に排出
空調の効果的な使用
練習の1時間前から空調を稼働させておく
送風機能だけでも効果あり(風による気化熱の促進)
扇風機を外に向かってかけ、熱気を逃がす
霧吹きをかけ、うちわであおぐだけでも効果が実感できます
反射材の活用
窓からの直射日光には遮光カーテンや反射シートを活用
体育館の天窓がある場合は特に注意
床面管理
床面の温度上昇を抑えるため、定期的に水拭き
特に武道場の畳は熱がこもりやすいため注意
時間帯の工夫
体育館内温度は日中よりも夕方の方が上昇する傾向(熱の蓄積)
可能であれば、早朝や夜間の活動が望ましい
防具の工夫
防具や面、ヘルメットなど熱がこもるものは外して休憩をとる
危険がない練習では外して練習する ※無いことで危険が伴う時は必ず着用
プールの効果的活用
活動前のプール利用:
練習前に10〜15分間の水浴(深さ腰程度)で深部体温を下げる
氷水浴との違い:
冷たすぎる水(20℃以下)は血管収縮を起こすため、
28〜30℃程度の水温が理想的
実践方法:
運動前: 水深腰程度に10分間立つだけでも効果あり
休憩時: 腕を肘まで浸す(手首冷却法)でも体温上昇を抑制
応急処置: 足首〜膝下までの浸水でも全身冷却効果が得られる
メリット: 一度に多くの選手を冷却でき、特別な設備が不要
子ども用プールでも十分な効果があります
まとめ:指導者の観察眼が命を救う
熱中症対策において最も重要なのは、
指導者の「観察眼」です。
選手の普段と違う様子
(動きの鈍さ、反応の遅れ、顔色の変化など)に素早く気づき、
適切に対応することが命を守ります。
特に注意すべき兆候:
いつもより動きが鈍い、反応が遅い
顔色が赤すぎる、または逆に青白い
異常な発汗(大量、または逆に発汗停止)
言動の不自然さ(呂律が回らない、同じことを繰り返す)
これらの兆候が見られたら、
すぐに休ませ、涼しい場所で体を冷やすなどの対応を取りましょう。
「もう少し頑張れ」という言葉が
取り返しのつかない事態を招くことも忘れないでください。
また熱中症についてはスポーツをするうえで毎年課題となる症状です。
日本スポーツ協会や各スポーツ公益財団法人、
各省庁、国立スポーツ科学センターで熱中症についてまとめております。
下記のリンクからご一読ください。
日本スポーツ協会HP
日本スポーツ協会 熱中症のガイドブック
環境省 熱中症予防情報サイト
埼玉県熱中症ガイドライン
私たちPlus ONE 鍼灸接骨院 Life & Performanceには
日本スポーツ協会から認定されているスポーツトレーナー(アスレティックトレーナー)
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スポーツ環境の設営や熱中症の対策について気になればご相談ください。
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今回のポイント:
熱中症の症状は段階的に進行し、早期発見が重要
WBGT値を基準とした活動指針の遵守が基本
体重の2%を超える水分喪失で運動能力が低下し始める
頸部・腋窩・鼠径部の冷却が効率的
屋内環境も熱中症リスクが高く、特別な対策が必要
5月下旬〜6月の暑熱順化前が最もリスクが高い
経口補水液とスポーツドリンクは目的に応じて使い分ける
プールや水浴は効果的な体温冷却手段となる
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