熱中症予防ガイド~アスレティックトレーナーから保護者・指導者の皆様へ~
- cashregisterpluson
- 6月24日
- 読了時間: 9分
お世話になっております。院長の佐野です。
とうとうムシムシして暑くなってきましたね。。。
以前にも記事にした熱中症についてもう一度記事にします。
スポーツのみならず、田んぼや畑作業の場合でも熱中症になる可能性は十分にあります。
熱中症になる前に
熱中症になったら
そんなお話になります。
以前投稿した熱中症の記事はこちらから!
はじめに
これから夏本番を迎え、スポーツ活動における熱中症のリスクが急激に高まる時期となります。
アスレティックトレーナーとして、多くの現場で選手の安全管理に携わってきた経験から、
熱中症の怖さと予防の重要性について皆様にお伝えしたいと思います。
熱中症の恐ろしさ
命に関わる緊急事態
熱中症は単なる体調不良ではありません。
重症化すると以下のような状態になります:
熱射病:
体温調節機能が完全に破綻し、体温が40℃を超えます
意識障害:
判断力の低下から昏睡状態まで進行します
多臓器不全:
腎臓、肝臓、心臓などの機能が低下します
最悪の場合、死に至る可能性がある深刻な病態です
※若い選手ほど危険です
特に注意すべきは、若い選手ほど以下の特徴があることです:
体温調節機能が未熟です
自分の限界を正しく判断できません
「頑張らなければ」という気持ちが強く、症状を我慢してしまいます
指導者や仲間に迷惑をかけたくないという思いから、不調を隠してしまいます
これからの時期の特別な危険性
1.気温上昇への身体の適応不足
6月後半から7月にかけては以下の理由で危険度が高まります:
急激な気温上昇に身体がまだ適応していません
暑熱順化(暑さに慣れること)が不十分です
前年の夏からのブランクにより、暑さへの耐性が低下しています
2.湿度の影響
日本の夏の特徴である高湿度は以下の影響があります:
汗の蒸発を妨げ、体温調節を困難にします
気温がそれほど高くなくても危険度が増します
WBGT(湿球黒球温度)での正確な判断が必要です
熱中症の段階と症状
Ⅰ度(軽症)- 熱痙攣・熱失神
症状:
めまい、立ちくらみ、筋肉のこむら返り、大量の発汗
対応:
涼しい場所での休息、水分・塩分補給を行います
Ⅱ度(中等症)- 熱疲労
症状:
頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、集中力低下
対応:
病院受診が必要です。点滴などの医療処置を受けます
Ⅲ度(重症)- 熱射病
症状:
高体温、意識障害、けいれん、肝・腎機能異常
対応:
救急搬送が必要です。集中治療を受けます
効果的な予防策について
事前準備
暑熱順化の実施
練習開始2週間前から段階的に暑さに慣らします
軽い運動から始めて徐々に強度を上げます
十分な水分補給を併せて実施します
体調管理の徹底
前日の睡眠時間の確保(最低7-8時間)をします
朝食の摂取を心がけます
体調チェックシートを活用します
体重測定による脱水状態の把握をします
練習・試合中の対策
環境の監視
WBGT計による客観的な暑さ指数の測定をします
気温だけでなく湿度、輻射熱を総合的に判断します
危険度に応じた練習内容の調整を行います

水分補給の実践
事前補給: 練習・試合の2-3時間前に500mlを摂取します
途中補給: 15-20分ごとに150-200mlを摂取します
事後補給: 体重減少分の150%を補給します
スポーツドリンクの種類と使い分け
種類 | ナトリウム濃度 | 糖質濃度 | 使用場面 |
コカ・コーラ社スポーツドリンク | 40mg/100ml | 4.7g/100ml | 日常の水分補給、軽い運動時 |
大塚製薬スポーツドリンク | 49mg/100ml | 6.2g/100ml | 運動中・運動後、発熱時 |
経口補水液 | 115mg/100ml | 1.8g/100ml | 脱水症状時、熱中症の初期対応 |
経口補水液(OS-1)を使用するタイミング
軽度の脱水症状が見られる時に使用します
大量の発汗後に摂取します
吐き気や食欲不振で通常の水分摂取が困難な時に使用します
熱中症Ⅰ度の応急処置として使用します
医師から脱水対策として推奨された時に使用します
※注意点
OS-1は塩分濃度が高いため、健康な状態での大量摂取は避けてください
日常的な水分補給にはアクエリアスやポカリスエットが適しています
それでも症状が重い場合は医療機関での点滴治療が必要です
指導者・保護者の役割
観察のポイント
顔色の変化(青白い、赤い)を確認します
発汗状態(異常な大量発汗、発汗停止)を観察します
動きの変化(ふらつき、反応の鈍さ、目の焦点が合ってない)に注意します
会話の内容(辻褄が合わない、反応が遅い、ろれつが回ってない)をチェックします
環境整備
日陰や風通しの良い休憩場所を確保します
河川敷では日陰は少ないので、可能ならテントの設営も検討します
冷却用品(氷、冷たいタオル、扇風機、霧吹き)を準備します
緊急時の連絡体制を確立します
グラウンドから近く対応できる医療機関を確認しておきます
アイシング(冷却療法)の効果的な活用
1.基本的なアイシング方法
氷を使った直接冷却
部位:
首の後ろ、脇の下、鼠径部(太ももの付け根)を冷却します
方法:
ビニール袋に氷を入れ、薄いタオルで包んで当てます
氷のうを使う場合、水は入れないでも効果が発揮します
時間:
10-15分間、皮膚の感覚を確認しながら実施します
注意:
直接氷を肌に当てず、凍傷を防ぎます
2.全身冷却の方法
プール・アイスバスの活用
水温:
10-15℃が理想的です
時間:
10-20分程度行います
効果:
全身の体温を効率的に下げることができます
利点
大人数で活用できる
注意点:
心臓に疾患がある場合は医師に相談してください
急激な温度変化を避けるため、段階的に入ります
監督者が必ず付き添います

シャワーを使った冷却
冷たいシャワーを首、手首、足首に当てます
頭部から徐々に全身にかけます
練習後のクールダウンとして効果的です
自宅でのリカバリー冷却
アイスノンを使った睡眠時冷却
使用部位:
首の後ろ、額、脇の下に使用します
方法:
アイスノンをタオルで包んで使用します
就寝前に体温を下げることで睡眠の質が向上します
朝まで連続使用せず、2-3時間で外します
効果:
深部体温の低下により入眠しやすくなります
疲労回復を促進します
翌日のパフォーマンス向上につながります
冷却タオルの活用
濡らしたタオルを冷凍庫で冷やします
練習後や入浴後に首に巻きます
外出時の携帯用冷却アイテムとして活用します
段階別冷却プロトコル
緊急時(熱中症疑い)
衣服を緩める・脱がせ熱を逃がします
首、脇の下、鼠径部に氷を当て冷却
可能であれば冷水に浸したタオルで全身を冷やします
扇風機やうちわで風を送ります。霧吹きを使いミストシャワーにしても効果的です
練習後のリカバリー
10-15分間のアイスバスまたは冷水シャワーを行います
十分な水分・電解質補給を行います
涼しい場所で休息を取ります
体重測定をし、運動前後で2%以内の体重減少になるよう水分補給をします。
(50kgなら1㎏、60㎏なら1.2kg以内)
就寝前のケア
ぬるめのシャワーで汗を流します
アイスノンで首や額を冷却します
エアコンで室温を適切に調整します(26-28℃)
通気性の良い寝具を使用します
※アイシング時の注意点
時間の管理:
長時間の冷却は凍傷の危険があります
個人差への配慮:
冷えに敏感な選手への注意が必要です
寒冷アレルギーがある場合、冷やすことで蕁麻疹がでてしまうことがあります
段階的実施:
急激な温度変化を避けます
観察の継続:
皮膚の色や感覚の変化をチェックします
※緊急時の対応
応急処置の手順に従って行動しましょう。
もう一度チーム・保護者で確認をしましょう
安全な場所への移動 -
日陰、風通しの良い場所に移動させます
衣服の調整 -
緩める、脱がせます
体位の確保 -
足を心臓より高く上げます
冷却の実施 -
首、脇の下、鼠径部を重点的に冷却します
水分補給 -
意識がはっきりしている場合のみ行います
無理やり飲ますのは誤嚥につながり危険です
飲めない場合、病院で点滴等の治療が効果的です
医療機関への連絡 -
迷ったら救急車を呼びます
#7119では地域の救急安心センターへつながり、専門家からアドバイスを受けることができます
119番通報で伝えること
熱中症による体調不良者が発生した事を伝える
選手の年齢 性別 名前 生年月日
何のスポーツを何時からしていたか
何分前くらいから熱中症になったか
救急車が向かう場所
※○○学校グラウンド・
総合公園ならA面、3番グラウンドなど細かく!
※絶対にしてはいけないこと
意識がもうろうとしている選手に水分を無理に飲ませることは避けます。誤嚥を防ぎましょう
症状を軽視して練習を続けさせることは危険です
一人にして様子を見ることは避けます。誰かがそばについてください
急激に体を冷やしすぎることは危険です
本人の大丈夫。の言葉を鵜呑みにして一人で帰らせないこと
日常的な取り組み
教育の重要性
選手への教育
熱中症の症状と危険性を理解させます
自分の体調を正しく伝える重要性を教えます
水分補給の方法とタイミングを指導します
無理をしないことの大切さを伝えます
保護者・指導者の連携
定期的な情報共有を行います
緊急時連絡網を整備します
症状に関する共通理解を図ります
予防策を統一します
熱中症になりやすい選手もいますので、細かく声かけをしましょう
環境づくり
選手が体調不良を伝えやすい雰囲気を作ります
休憩を取ることへの理解を示します
安全第一の価値観を共有します
科学的根拠に基づいた判断を行います
まとめ
熱中症は予防可能な疾患です。
しかし、一度発症すると命に関わる危険な状態となり得ます。
これからの時期は特に危険度が高まるため、
選手、指導者、保護者が一体となって予防に取り組むことが不可欠です。
「まだ大丈夫」
「去年は平気だった」
という油断が最も危険です。
毎日の気象条件を確認し、選手一人ひとりの体調を把握し、
科学的根拠に基づいた適切な判断を行いましょう。
選手の安全と健康を守ることは、私たち大人の責任です。
俺の時代はこうだった。なんて言ってもなんも意味がありません。
練習を省略するのも勇気がいりますが、選手生命には代えられませんよね。
熱中症による悲しい事故を防ぐため、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
以前投稿した熱中症の記事はこちらから!
参考資料
日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」
環境省「熱中症予防情報サイト」
日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン」
タグ:#熱中症 #熱射病 #水分補給 #熱中症警戒アラート
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最後までお読みいただきありがとうございました。
皆さまとお会いできることを楽しみにしています。
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